濾胞性リンパ腫って何?治療法や症状、進行状況を紹介!

「濾胞性(ろほうせい)リンパ腫」は、健康な状態だとなかなか耳にすることのない病名です。濾胞性リンパ腫とは、悪性リンパ腫の一種です。悪性リンパ腫というのは簡単にいうと「血液のがん」です。あまり知られていないだけに、怖い病気だと思われがちです。

情報も少ないので、よけいに不安になってしまう人が多いのです。濾胞性リンパ腫の病状と生存率、予後について丁寧にわかりやすく説明していきます。

濾胞性リンパ腫の基本知識

休む

完治がないといわれる濾胞性リンパ腫とは、どのような病気なのでしょうか?

調べても、難しい医学用語が多くて結局わからないまま・・・という人も多いので、ここではできるだけ簡単にわかりやすく説明していきます。

悪性リンパ腫のこと

濾胞性リンパ腫の前に、まず、悪性リンパ腫から少し説明していきましょう。血液中には、酸素を運ぶ「赤血球」、出血を止める働きをする「血小板」、免疫をつかさどる「白血球」などの成分が入っています。その内、白血球の中に含まれる、B細胞、T細胞、NK細胞をまとめてリンパ球といいます。これらががん化して無制限に増殖することで発症するのが、悪性リンパ腫です。

リンパ球ががん化するとは、どういうことなのでしょうか。これは、正常なリンパ球ががん細胞に変化することをいいます。がん細胞とは、がん腫(悪性腫瘍)を構成する細胞のことで、正常な細胞と比べて大きさや形がふぞろいで、増殖するスピードが早い細胞です。

悪性リンパ腫ができる場所

悪性リンパ腫が発生する部位は、リンパ系組織とリンパ外臓器の大きく2つに分けられます。リンパ系組織とは、免疫システムの一部です。リンパ節をつなぐリンパ管やその中を流れるリンパ液、脾臓、胸腺、扁桃などの組織や臓器を指します。

リンパ外臓器とは、腸管、胃、甲状腺、骨髄、肝臓、肺、皮膚などを指します。これらの部位は全身にあるので、全身のいたるところで発症する可能性があります。がん化した細胞が増えたり、転移して病気が進行すると、痛みが激しくなり、全身状態が悪くなります。いわゆる、「がん」です。

濾胞性リンパ腫とは

濾胞性リンパ腫は、悪性リンパ腫の一種です。

リンパ球のうち、B細胞から発生する非ホジキンリンパ腫のことをいいます。低悪性度B細胞性悪性リンパ腫の一分類という位置づけで、名前にある「低悪性度」とは、年単位でゆっくりと経過をたどるものを表します。濾胞性リンパ腫は、他のリンパ腫と比べて進行が遅いことが特徴なのです。

悪性リンパ腫の中では発生が少なく、日本では全悪性リンパ腫の15%程度といわれています。しかし、近年増加傾向が指摘されています。高齢者に発症が多く、60代以降の患者数が特に増えています。

濾胞性リンパ腫の症状と余命

医師

濾胞性リンパ腫の症状について見ていきましょう。

進行度に応じた症状

濾胞性リンパ腫になると、頸部(けいぶ=首)、胸部、腹部などのリンパ節が腫れます。

そのほかの自覚症状はないことが多く、気付かないうちにステージが進んでいる場合があります。ステージとは病期や病期分類とも呼ばれる、がんの進行の程度を判断する基準です。がんの治療法を選ぶためだったり、生存率を算出するために用いられます。

発熱、寝汗、体重減少、湿疹といった症状が現れる人もいますが、症状の出方や程度は人それぞれです。微熱程度の人もいれば、寝具がびっしょり濡れる人もいます。一つの症状だけだったり、複数の症状が出る人もいます。ただ、割合でいうと、何らの兆候も感じない人の方が多いです。

濾胞性リンパ腫の特徴

濾胞性リンパ腫は、細胞を病理で検査することで診断がつきます。病理組織に、リンパ節の中に腫瘍性濾胞(しゅようせいろほう)という、がん細胞がたくさん集まっている球状のものが最低でも1つは見られることがこの病気の特徴です。進度が進むと、さらにリンパ節の中にたくさん濾胞が増えていきます。

この病気の怖いところは、ステージが進んでも無症状であることが多いことです。自覚症状がある場合でも、がんの大きさに比べると症状は軽度です。濾胞性リンパ腫の診断ができる頃には、すでにⅢ期、Ⅳ期の進行期であることが多く、しかもその半数はⅣ期の中でもさらに進度の高い、骨髄に浸潤された状態で病気が発覚しています。ステージⅤというものはありません。つまり、最も悪い状態に陥ってようやく発覚することが多いのです。

気になる生存率

医師は、「安心してください」「大丈夫ですよ」とはなかなか言えないのです。病院が、そうした発言をしないよう医師に指導しているケースもあります。万が一のことがあったときに、病院が責任の所在を問われることにもなりかねないからです。

濾胞性リンパ腫の生存率は、他のタイプのリンパ腫と比べて高いです。初回治療後の3年生存率は95%ともいわれます。高齢者に多く見られる病気であることを考慮すると、濾胞性リンパ腫=死に直結ということはないと考えていいでしょう。ただし、この病気は病状が良くなっても完治ではなく「寛解した」という言葉で表現されます。長期的に見ると再発のリスクは高いので、生活習慣などにおいて注意は必要です。

早い段階で治療を開始するほど、生存率は高くなります。Ⅰ期で放射線治療を開始した場合の10年生存率は、60~80%とされています。血液内科の分野においては、年々飛躍的に研究開発が進められています。他のがんと比べても生存率はかなり高いので、絶望することはありません。ストレスは再発の元にもなってしまいますから、気の許せる家族や友人と過ごす時間を多くして、なるべくリラックスして楽しい気持ちで毎日を送れるといいでしょう。

濾胞性リンパ腫の治療について

薬

濾胞性リンパ腫は、化学療法や放射線療法の効果が高いといわれています。具体的にどういうことなのでしょうか。治療方法について、詳しく説明します。

治療の中心は化学療法

化学療法とは、がん細胞を薬や抗生物質を使って抑制・殺減を試みる治療法です。濾胞性リンパ腫には、R-CHOP(アールチョップ)療法か、R-CVP療法が行われます。

R-CHOP療法とは、がん細胞のもつ特性を阻害するためのリツキサン、抗がん剤のエンドキサン、アドリアシン、オンコビン、ステロイドのプレドニンという薬を併用する治療方法です。

R-CVP療法とは、R-CHOPの薬からアドリアシンを除いた組み合わせで行われる治療のことをいいます。

初期の治療では放射線治療も

初期段階の濾胞性リンパ腫では、一般的に病変部分の放射線治療が行われます。放射線治療とは、病変(=がん)に治療用の放射線を当てて、がん細胞を死滅させる治療法です。放射線は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも同様に作用しますが、正常細胞の方ががん細胞よりもダメージが低く、自然回復できると考えられています。

がん細胞は、この放射線治療で根絶する可能性が高いです。ただし、Ⅰ期やⅡ期のステージで発見されることはまれなので、治療法として化学療法ほど多くは用いられていません。

副作用は?

化学療法による副作用は、免疫機能が低下して、感染症を起こしやすくなるという副作用が最も懸念されます。特に高齢者は感染症を起こしやすいので、血液検査の結果をしっかり管理しながら治療が行われる必要があります。R-CHOP療法の1回目は点滴中に発熱などの副作用が起きやすいので、通常入院して行います。2回目以降で体調に問題がなければ、通院で治療が続けられます。免疫機能が低下する原因となる、好中球の減少が著しいときは、好中球の減少を防ぐG-CSFを治療の合間に注射します。抗がん剤の副作用では、吐き気が強く出ることもあります。

放射線治療の副作用としては、全身の倦怠感、食欲低下、おう吐や皮膚疾患が挙げられます。長期的な視点でみると、放射線を浴びた臓器の機能低下や、二次がんの発生といった副作用もあります。

治療の効果について

R-CHOP療法を行うことで、大半の人は寛解状態になります。画像検査でがん病原が目視で確認されないことを、「寛解」といいます。寛解の時点ではがんが消えているのですが、長期的に見ると再発のリスクは高いといえます。特に高齢者や全身状態が悪い人、濾胞性リンパ腫が進行していた人はリスクが高くなります。

治療後の予後について

禁煙

「寛解」と呼ばれる段階に入った後の生活では、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。気になる点について、わかりやすくお答えします。

再発した場合

濾胞性リンパ腫は、寛解となっても再発の可能性があるため、注意する必要があります。ただ、再発したからといってすぐにまた治療を再開するのではなく、一般的にはしばらく経過を見ることになるでしょう。経過観察の間は、3ヶ月に1度程度受診をして、診察と血液検査をします。半年~1年周期で、画像検査も行います。もしもがんの症状が出てきた場合には、抗がん剤を使った化学療法も検討されます。症状が出ない場合は、4~5年は経過をみる場合もあります。

濾胞性リンパ腫は、びまん性大細胞方B細胞リンパ腫という病気に変化することがあります。この場合には、新たな病気に応じた治療が行われることになります。

再発防止のためにできること

まずは、無理をしないことです。真面目な人ほど、がんになりやすいといわれます。がんばりすぎず、疲れたら休むことを心がけましょう。なるべくストレスを受けないようにすることも大事です。大きなストレスとなるようなことは、とにかく回避して、楽に生きましょう。

体にストレスを与えないためにも、たばこは避け、アルコールも控えた方がよいでしょう。栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠、そして適度な運動をしましょう。朝の散歩や、ラジオ体操はお金もかからず、手軽にできます。太陽の光を浴びて散歩をすることは、ストレス解消にも効果があることが実証されています。

まとめ

自覚症状がほとんどない濾胞性リンパ腫が発覚するときは、既にステージが進んでいることが多いので、もう寿命がないのでは?と不安になる人も多いです。しかし、濾胞性リンパ腫の生存率は他のがんと比べてはるかに高いのです。そして、血液内科の分野の研究成果は、年々飛躍的に向上しています。適切な治療を受けることによって、多くの人はがん細胞が目視できなくなって通常の生活が送れるようになります。

再発防止には、穏やかな気持ちで無理をしないで毎日を過ごすことが大切です。先のことをあまり考えず、1日1日を明るく大切に過ごすようにするとよいでしょう。

  
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